仮面ライダーオタクはサイケまたしてもを読め

はじめに

この記事はタイトルの通り、仮面ライダーが好きな人に向けて面白おかしく漫画『サイケまたしても』を紹介する記事です。サイケまたしてもという作品に対して真摯な姿勢ではありません。具体的に言うとメインキャラだけど仮面ライダーの文脈に当てはまる人物がいないアナの話などをわざとすっぽかしたりする。面白く語るためならネタバレもする。真面目な解説を求めている人はブラウザを閉じ、他の人の作った紹介を見て、寝ろ。*1
そして先に謝っておきますが、スゴイ高確率でこの記事を読むであろう福地翼先生、申し訳ありません。


お前は『サイケまたしても』を知っているか?


この記事のメインターゲット、もとい俺のフォロワーに多い仮面ライダーのオタクはこのサイケまたしても』という漫画を知っているだろうか。そもそも知らなかったのでなんだこの妙なタイトルはと思った人も多いだろう。
サイケまたしても、略して『サイまた』は小学館系列の漫画が読めるアプリ『サンデーうぇぶり』で2020年3月9日現在、全巻無料公開中の少年漫画である。つい去年まで連載されていた。つい去年まで連載されており、今全巻無料で読めるということは、旬の漫画である。

 

作者の福地翼先生はアニメ化までしたゆうめいな『うえきの法則』を連載していた漫画家だ。一部ではエゴサがすごい得意なことで有名。
ご存じの人も多いと思うが『うえきの法則』はざっくり言うと中学生が異能力バトルをする。ちなみに俺はなんとなくしかご存じではないので、3月15日からうぇぶりでの全話無料公開でご存じになる予定だ。
『サイまた』もうえきの法則と同じで、中学生が異能力バトルをする。中学生の異能力バトルでゆうめいな作家が書いた異能力バトルだから、もう面白いことは確定しており、この時点で最高だということがわかる。

そのうえ『サイケまたしても』はかなり仮面ライダーなのである。

俺の幻覚ではない。事実、俺に読んだと教えてくれた数名の人間はかなり仮面ライダーだと同意してくれた。それくらい『サイまた』では仮面ライダーで見たことのある要素が頻出する。
まずはストーリーの根幹である異能力の設定回りを見ていこう。

 

 

サイまたは骨子のテーマがかなり仮面ライダー

①敵と味方の力が同じ


敵も味方も、全く同質の能力で戦っている。『サイまた』の能力はかなりフリースタイルなので、スタンドくらいの自由なバリエーションがある。しかし、誰しもがあるとき突然自分が力を手に入れていることに気がつくのだ。(ここ仮面ライダーで見たやつな。)そして、力自体に善も悪もない。
つまり、


②力は使うもの次第

力それ自体に善悪がないのなら、問われるのは使用者の心だ。
使用者の心が様々ということは、力についての異なる思想の人物が出てくる必要がある。ということは…


③正義の反対はまた別の正義


一般に、正義の反対は純粋悪であることの方が少ない。どちらの主張にも一理あって、簡単には人の考えを変えることができない。だからこそ、それでも相手は間違っていると主張する主人公の強さが際立つ。
サイまたで、主人公は力を持つこと自体に善悪はなく、全ての人を助けるべきだと考えているが、能力を持つこと自体を悪だと思っている者もいるし、能力を持つもののみを助けるべきだと思っている選民思想的な敵も存在している。
そしてサイまたの異能力は全ての人間に目覚めるわけではなく、社会的認知度は低い。

④力を手に入れたものが迫害を受ける


世間一般から見れば都市伝説レベルの存在でしかない能力者たちは迫害を受ける。恐れられるから、その力を隠す必要がある。タイトルによっては、仮面ライダーに変身する側や怪人が仮面で正体を隠しているのはこれと同じ理由だ。迫害されるから隠れなければならないのである。

この辺の骨子の味、仮面ライダーに通底しているやつである。まず俺のような仮面ライダーをシリーズとして愛しているオタクはこういう骨子の構造が好きに決まっている。毎年これと同じ味を摂取するためにニチアサを見ている。だからサイまたも好き。非常にロジカルですね。

 

登場人物も割と仮面ライダーで見たことある


※独断と偏見で誰がどの『仮面ライダーでの概念上のポジション』か決めているけどあくまでも俺の考えなのでそこは言いっこなしで。

 ↑これは普通のキャラ相関図。顔はこれで確認してほしい。いやサイケの顔が怖い。

一号ライダー 葛城斎下(くずしろサイケ)


主人公だ。『サイケまたしても』の主人公なので、サイケ。
サイケは普通の陰のタイプの中学生だが、覚悟がガン決まっている
仮面ライダーで言うと剣崎一真かというくらいの覚悟の決まり方だ。
というよりある日振って湧いた力のせいでヒーローでいることに取り憑かれており、全ての人を救うヒーローでいようとしており、非常に危なっかしくなっていう。
そんなサイケの能力は『時間遡行』。ある特定の池でおぼれ死ぬと、一日タイムリープしてやり直せる。そして戦況分析能力が非常に高い。
つまり『望んだ正義の味方としての行動の結果を得られるまで、何度でも溺れ死に、無限に同じ日を繰り返す』
強すぎて怖い……でもそういうところが好きだよ。
しかも、人に好かれるタイプ。最終的にはものすごい人数からの協力を取り付けることに成功するので、サイケがどこまで突き進むのか見届けてほしい。特に剣崎が好きなオタクは見ろ。
あと個人的には常磐ソウゴより王様に向いていると思う。どう?


二号ライダー 氷頭栄治(ひずえいじ)


典型的な二号ライダーである。
見た目は不良で感情が表情に出ないタイプの青年。
厳しい環境で育ったせいで自己肯定感が死んでいるが、根はいいやつで素直。
能力はパワータイプだが、真面目なので能力とは別にフィジカルを相当鍛えており、終盤までちゃんと強い。あと最終的になる
氷頭の特徴は、サイケ命のところだ。常にサイケのことしか考えていない
初登場時の氷頭は虚無虚無の虚無だったので喧嘩に明け暮れていたが、サイケが文字通り死ぬほど氷頭と向き合ったため、改心してサイケに「お前の最期を看取りたい」と告白した。
これ誇張でもなんでもなく事実。言葉選びを間違えたとかでもなく““ガチ””であることを、我々は氷頭が味方になってからの13巻分でたっぷりと思い知らされることになる。感情がデッッッッッッカイ。オタク・クソデカため息出るわこんなん。
氷頭の様々な要素は、仮面ライダービルドのベストマッチコンビの片割れ・万丈をほうふつとさせる。というか15巻のあのサイケとのラストシーンでBe The One流れてなかった? 俺には聞こえたぞ。

三号ライダー 黒田ユメヲ(くろだ-)


裏主人公ともいうべきポジション。1クール目のボス敵だが、以降のクールでは利害の一致で手を組んだりする。このムーブこそ三号って感じがする。
超のつくネガティブ男×未来予知能力なので、一般サラリーマンながら危機管理能力の鬼でありなかなか強い。
彼の目的は妹を昏睡させた能力者を見つけ出し、ユメヲの持つ二つ目の能力『能力消去』でその能力者の能力を消し去り、妹を助けることだ。この過去のせいで能力自体に否定的な一方で、めちゃくちゃ仲間思いなので能力者集団のリーダーなどもやっている。いい奴じゃん…。
三号ライダーなのでユメヲ主人公のVシネもとい読み切りが存在している。いい。

四号ライダー ヨハン・ディートリッヒ


見た目からしてクレイジーなタイプ。他人との距離の詰め方がおかしい童顔の29歳。
突然ユメヲを裏切り、能力者は『次の人間』であるとし、進化の証であると主張して行動を開始。能力を持たない旧人類はいずれ自分たちを迫害するとしつつ、全ての人間を能力者にすべく暗躍する。
昔は目が輝いていたり今は目がヤバくなっていたり、最終的には……見ましたか? なんだったんだろう……分からない……オタクが好きなことばかり詰め込まれている……もはや仮面ライダーに充てた紹介ではなくて個人的なよくわからない気持になってしまった。
クレイジータイプの中ボスなので、当然のごとく強い。しかもサイケと同じくらい覚悟がガン決まっている。

 


おまけで、仮面ライダーではなくて敵の怪人の話もする。あえてメインの敵キャラクターではなくて俺の好きな奴の話をする。堂々としたひいきだが、この記事自体がそもそも好きなものをフリースタイルで語っている記事なので許して。

 

カリム・クリスタンヴァル


こいつは人間態が用意されている人気が出るタイプの敵幹部。
現実がゲームだと思っている痛い奴でもあるが、氷頭いわく『サイケと会えなかったオレ』。
氷頭と同じくらいの英才教育で心がねじ曲がったカリムは、しぶとく敵として盤面に居座りながらゲーム感覚で戦闘する。裏切って裏切って戦闘を続けたカリムは、しかし氷頭やサイケの強い思いに触れていき……。


いそげ!!時間がない!!

……ここまでいろいろ書いてきたが、実際に仮面ライダーを期待して読むとさほど仮面ライダーでもないと思う。こういうオタクの誇張した喧伝は往々にして、対象の作品を都合よく歪めて自分の語りたいものに当てはめてしまう。俺自身、そうしたよくない誇張をやってしまった自覚がある。
しかし、どんなにダーティースタイルでも、人に広まればいい。とにかく時間がないのだ。
なぜって、サンデーうぇぶり上のサイケまたしても』無料公開期間は2020/3/8~3/14の一週間しかないのである。俺はなんとしてでも、無料公開というこの千載一遇のチャンスにサイまたを読んでほしい。きっと俺がどんなに言葉を尽くしても語りつくせない面白さがある。
そしてサイケまたしてもの無料公開が終わったら翌週はうえきの法則だ。
つくづくオタクは、家に引きこもっているときの方が忙しくて人生退屈しないものである。

 

www.sunday-webry.com

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俺はふだん、こうした胡乱な調子で仮面ライダーの方を「実質〇〇」などといいながら考察をしている。
この記事と似たギリギリリスペクトの姿勢で書いた仮面ライダージオウの考察同人誌がまだ少し在庫がある。サイまたも読み尽くしたオタクはこちらもいかがだろうか。分厚いし、P.A.R.T.Y.なので表紙が七色に輝いている。

behind-aurora.booth.pm

*1:例えば、奈須きのこ御大が竹箒日記2016/03/15でサイまたを紹介している。流石に文章がうまく、俺とは比べるべくもないくらいまっとうに紹介している。型月のオタクは俺の記事なんか読んでいる場合じゃない。
http://www.typemoon.org/bbb/diary/log/201603.html